今、目の前にいるのは
息子を殺した犯人の両親
善良な夫婦と言うのは
観ればわかる
犯人も自殺している
憎いはずの
犯人の両親の悲しみは
考えればわかる
僕なら、
ツバをかけるかもしれない
蹴り倒すかもしれない
刃物を用意して刺してしまうかもしれない
セリフや演出で、その状況に置かれた人が、そんな態度で、そんなことを言う？と感じた部分はあるけど、人間関係のトラブルで最も大切なもの、憎い相手に自分がどうあるべきかを教えてもらえました。
加害者家族と被害者家族が対話するだけの物語
アメリカの高校で起きた無差別銃撃事件の後日談となる物語です。
そして、登場人物は下記の通り。
加害者両親のリチャードとリンダ。
被害者両親のジェイとゲイル。
被害者家族の息子は同級生である犯人に殺されているわけですが、その犯人もまた銃撃を終えたあと警察に捕まる前に自殺しています。
この4人の対話だけの物語。
この4人が対峙する場所として、とある教会が準備されています。ところが、被害者両親のジェイとゲイルは、車でその教会を通り過ぎます。
ゲイルは、ジェイに言います。
「私、言えるか分からない。自信がないわ。」。
このシーンから、この映画は始まります。
自分なら、どうするか？
目の前にいるのは、間違いなく善良な普通の夫婦だが、息子を殺した犯人の両親であることに間違いはない。
前述したように犯人も自殺しているので、被害者両親のジェイとゲイルも加害者両親のリチャードとリンダが、自分たちと同じ深い悲しみのなかを生きていると頭で分かる状況であります。
僕なら、ツバをかけるかもしれない。
僕なら、蹴り倒すかもしれない。
僕なら、刃物を準備して刺してしまうかもしれない。
先ずは、「自分の息子と同じ苦しみを！」という感情に支配されるだろうなと思います。
その次に、「そんなことをしても、息子が生き返らない息子は喜ばない。」、「そんなことをしても、息子は喜ばない。」などを考える気がします。
とはいっても、「息子は、何を望むだろうか？」と考えたところで、何も思い浮かばない。
重苦しいテーマだし、めちゃくちゃ考えながら観ているのですが、ところどころ、ちょっとアレっ？てなりながら、「自分なら、どうする？」と戻りながら鑑賞しました。
そんなこと言う？ そんな態度とる？
会話が始まるシーンで、加害者母親のリンダが、自分の家の庭で取れたお花で鉢植えをゲイルにプレゼントするんだけど…
「ねぇだろ！」っ思っちゃいました。
話始めるのも、加害者父親のリチャードなんだけど、かなりハキハキと話します。
「ねぇだろ！」と思ったし、被害者両親を怒らせるために話しているように聞こえてしまう。微塵も罪悪感を感じない話し方。アメリカと日本の文化の違いかぁ～？とか考えながら観ていました。
演出なのか、演技なのか分からないんだけど、加害者両親の態度が理解出来ないところが多かったです。
それでも、観る価値は十分にあるエンディング！
被害者両親にも、加害者両親にも感情移入しようとするんだけど、どうも、加害者両親のセリフや態度が、それを邪魔してきます。
リンダは、パニックを起こしいるせいで、言動のフォーカスが不安定になっていると理解出来るにしても、リチャードの態度は、「息子のやったことなんだから、俺は関係ないじゃん。」と受けとれてしまう。
そこを含めて、ゲイルのセリフが、最後に奇跡を起こします！
自分の息子を殺した同級生の両親に…
「私は、あなたたちを許します！」
…。
…。
…。
観る前から、どんなオチなんだろう？、着地をするんだろう？と考えていましたが、超納得のラストのセリフでした。
このセリフにリンダが答えます。
「ある日、あの子が、怒りまくっている夜に、私は、自分が殺されるんじゃないかと自室に閉じこもってしまったの。怖くて。勇気がなかったの。私が、あの夜に、勇気を持って、あの子の目の前に立っていれば、あの事件は起きなかったかもしれない。」
人間関係のトラブルは「赦し」しかないのだと思う
自分が出来ているかと言われれば出来ていないし、この映画の状況に置かれたら、チャレンジすら出来そうもないと思います。
それでも、個人間のトラブルも、国家間のトラブルも、最後に行きつくのは、「赦し」ではないかと思います。
「許す」はこれから行う行為を認めること、「赦す」はすでに行った行為の失敗を責めないことです。
https://news.mgu.ac.jp/news/8207.html
戦争のさなかにいる人や凄く苦しんでいる人に押し付ける気はありませんが、これから、僕が、怒りに囚われてしまうこともあるだろうから、覚えておきたいと思います。
対峙（2021年）
監督 フラン・クランツ
脚本 フラン・クランツ
出演者 リード・バーニー ／ アン・ダウド ／ ジェイソン・アイザックス ／ マーサ・プリンプトン ／ ブリーダ・ウール ／ カゲン・オルブライト ／ ミッチェル・N・カーター
配信未定
公式サイト
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